テレマークスキー前転日記~ケガに注意!!

ヘタレスキー部も還暦.部員1~2人 @札幌

LS北見 vs 中部電力 平昌オリンピック決定戦を終えて

勝利の余韻にひたっております。
昨日は流れを決めた第3戦の録画を見直しました。

このブログへのアクセスも、代表が決定したあとの日曜と月曜にずいぶん増えました。
改めて振り返ってみます。
もうここからはマニアの世界です。

1.藤澤五月吉田知那美鈴木夕湖の3選手は、このシーズンに大きく変わった
2.LS北見の各選手にとってキャリアハイのシーズンになるだろう
3.本橋麻里は大きな夢を達成し、個人の夢は達成できないだろう
4.人間の成長とは、挫折を乗り越えるときにおきる
5.吉田夕梨花は本当に強い子かもしれない


1.成 長
振り返ると、昨シーズンは途中から鈴木夕湖選手(ゆーみ)がレギュラーをはずれ、本橋麻里(マリリン)が復帰してサードでバイススキップ、知那美選手(ちな)はセカンドに入った。代わらなかったのはリードの吉田夕梨花選手(ゆり)と藤澤五月選手(藤澤)だけ。

鈴木夕湖

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中部電力のスイーパー

ゆーみはまわりの期待に応えられないつらさ、コーチボックスから試合を見る悔しさを味わい、それまでの「自分の仕事をやっときます」的な姿勢から、声を出し、チームを支える1本の矢として動くようになった。試合後のインタビューで「大人になりました」と語ったようだが、それが試合に現れていた。スイープのタイミング、ショットの精度といった点でも非常に評価が上がった。
もう一つ、スイープがさらにスゴくなった。ゆーみ以外の選手は、ブラシを前後にこすりながら脚を動かし、どこかで脚がブラシへの遅れを取り戻すために1ステップ踏む。このステップの瞬間だけ間違いなくブラシの力が抜けるはずだ。ところがゆーみのスイープは、胴を中心にブラシの前後運動を足の運びに伝え、ほとんどステップなしでスイープを続ける。言葉ではわからないと思うので、動画を見てほしい。

中部電力のスイーパー2人は必ずステップを踏む。一方ロコは、ウエートが速いので条件は異なるが、ゆーみはほとんどステップを踏まない。

自分の石を押す藤澤のショットをスイープするゆーみ。リプレイで足の運びが見える。

ハウスのちなから「ガンバレ」のコールが入る。ここまで頑張れるのは、たぶん体力に加え体の使い方が上手だから疲労が少ないのだろう。

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右がゆーみ、左がゆり


誰もがやればいいはずなのにほとんどやれないということは、彼女のずばぬけた運動センスなのか。また、昨シーズンの猛練習がここまでスイープの技術を高めたのか。いずれにしてもスペアのきかないレベルに達している。


吉田知那美

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ちなは、サードをマリリンに奪われてきっとものすごくくやしかっただろう。われわれ外野(ファン)は藤澤のためにサード復帰を望んだが、ちながサードを外された理由はサード単体としてマリリンに劣っているという判断だったと思う。
バイス(副官)としてのちなは、銀メダルシーズンは藤澤の思うままにやらせていた。しかし今シーズンは藤澤といっしょにゲームを作っている。本当の意味でバイスになった。しかも、課題とされていたラインコールがさえた。藤澤とちなのコールが分かれた場面でも、決定戦ではちなのほうが適切だったという場面もあった。
サード・バイスとして、完全にまりりんを超えたと思う。すごく成長した。


藤澤五月
道銀カップ戦のブログでも書いたように、作戦が変わった。隙がなくなり負けにくくなってきている。この決定戦も作戦面はみごとだった。最初から攻める。ストーン配置が悪くなりそうなときは、リスクが大きくなる前にリスクの除去をする。勝負を決めるときは慎重に行くのではなく攻めていく。このあたりがいままで課題とされていた部分の改善だ。
第3戦の1エンドはどっちに転んでもよい感じだった。が中部電力のスキップ・松村さんは、ロコにあまりにも攻め続けられて、後攻を持っているのに3エンドの最初に守りにいってしまう。そして3点スチールされて勝負が決まった。
藤沢は第2戦の負けを引きずらず、みごとだった。気持ちで負けて守りに入るのはダメ。勝つために守るときは、ガッチリナンバーワンの石をガードする。そのあたりが大きな改善点だった。

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中部電力のファンの前で頭を下げる藤澤。90度のお辞儀はこの7年間の感謝の気持ち、と語っていた。ようやく中部電力から卒業することができた。


2.キャリアハイ
2月の日本選手権での負けがバネとなり、みんなが一気にレベルを上げてきた。おまけにオリンピックシーズン。今年は最高の成績を収めるのではないかと思う。年齢的に見て、この先は誰かがプライベートの変化がでてもおかしくない。いつまでもこの4人でカーリングできるかどうかわからないのだ。
もちろん誰がかけても戦力が落ちるが、そのなかで最も大切なのは作戦を組み立てるスキップ。この決定戦を見て、もし藤澤が抜けてもちながスキップをできると思った。妹-姉の組み合わせでもいいし、マリリン-ちなの組み合わせでもいい。ちなは本当にがんばったと思う。もしかして藤澤の次に優秀なスキップかも。
そもそも、5人が5人ともタレントぞろいなのだ。中学・高校の戦績でこの5人を上回るカーラーはまだ現れていないはず。


3.本橋麻里の夢

「北見から世界へ」マリリンがかかげた目標は、チーム設立から7年後の2017年に現実となった。一途で熱い思いが、まわりを動かしたのだろう。若手選手たちへの温かい思いと厳しい指導が、選手を育てたのだ。ただ、『自分がスキップで』という個人の夢は実現しなかった。それを諦めたから達成できた目標でもあった。
マリリンはサードやスキップに入ると小さくなってしまう。理由はわからないが、もし、自分のチームを持っていなければガンガンいけるのかもしれない。営業マン時代はやんちゃで成績も企画展開力もすごい人が、自分の会社を作ったら守りの営業になってうまくいかない、というケースを知っている。人はわからないものだ。
しかし、考えてもみれば、自分がスカウトした3人(ゆり・ゆーみ・ちな)が藤澤というタレントとともに自分を超えていく。チーム責任者としてこれほどうれしいことはないはずだ。

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世界戦の試合後といい今回といい、マリリンはゆーみが大好きのようだ。



4.挫折と成長と

早熟の天才たちだけに、挫折の経験も早くに訪れた。彼女たちの前に立ちはだかったのは小笠原歩選手(北海道銀行フォルティウス)。小笠原選手にはね返され、2014年のソチオリンピックに出られず涙をのんだ藤澤。小笠原選手といっしょにオリンピックに出たものの放出されたちな。彼女らをここまで大きく育てたのは、じつは小笠原歩という偉大な先輩だった。
親は子どもの平和で幸せな人生を望むものだ。親の立場で藤澤とちなを見たら、平穏な人生からはみだして、挫折して涙し、命がけで目標に再挑戦する娘に「もういい」と言いたくなりそうだ。藤澤はこの半年でインタビューの受け答えも変わるなど、人間として本当に成長したと思う。しかし、それは挫折があったからだ。なんというドラマチックな人生だろう。


5.吉田夕梨花選手
ゆりは職人のような受け答えをする。お姉ちゃんたちに混じって、そのなかでコツコツと。中学時代は姉を上回るタレントとも言われていたそうだ。なんてったって、中学1年の時に姉のチームに加わって日本選手権で表彰台に乗ってしまうなんて、とんでもない中学生だよね。波瀾万丈な1991年世代(姉世代)に比べ、彼女の成熟ぶりはなんだろうか。もしかしたらゆりがいちばんスゴいのかもしれないと思うようになった。

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試合後、マリリンと抱き合う。何かを報告しているようでもあった。



代表決定戦を見て感じたことを。

代表決定戦は、最高のパフォーマンスを表現する場ではなく、お互いにすごいプレッシャーのなかでそれに負けず、相手にプレッシャーをかけるプレッシャー合戦だね。
藤澤がデリバリーでコケたこと
中部電力・北澤さんが間違ってロコのストーンを投げたこと
ちなが石を離すタイミングが遅れ、1投無効になったこと
バイススキップとスキップが、ふだんはあり得ないミスをしたのです。
そして、中電のスキップ松村さんは、第4戦おやつタイムに思わず腰に手を当てました。異様なプレッシャーがふだんの何倍もの疲労となり、彼女を襲ったと思います。

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くちびるをかみ涙をこらえる松村選手。グッときた。

2月の日本選手権と今回の決定戦を通して、ロコと中部電力のファンがお互いをたたえ合うようになりました。藤澤の移籍問題でしこりがあった両チームですが、挫折の共有とカーリングへ向き合う真摯な姿勢が両チームに共通しており、ファンの心の距離を縮めたと思います。ボクらロコファンは、ロコが世界選手権の出場枠を必ずとってくるから、中電には日本選手権をとって世界選手権に出てほしいと願っているし、中電ファンの皆さんはロコをたたえてくれています。


最後にフォルティウス
北海道銀行フォルティウス小笠原歩選手のことを悪く言う人もいますが、ボクはぜんぜんそうは思いません。現役続行宣言には驚きましたが、よく考えれば、スキップの座は禅譲するものではなく、吉村紗也香選手が小笠原選手から奪うべきですね。そうでなければロコと中電には到底かなわない。
ロコと中電は、挫折と再挑戦によって小笠原選手を乗り越えたのです。吉村選手も実力で自チームの偉大な先輩を乗り越えなければなりません。
ボクは、リードにいい選手を探してきて、セカンド小野寺佳步、サード・バイス近江谷杏奈、スキップ吉村紗也香はどうかと思っています。
がそれよりとにかく小笠原選手を乗り越えること!!

平昌オリンピックまで

ロコはいま、カナダでツアーに参加しています。このあとスウェーデンに移動。その後再びカナダかな。そして11月にオーストラリアで開かれるパシフィックアジア選手権に出場します。
この選手権は2018年の世界選手権出場枠がかかっていますが、今年は上位3チームに枠が与えられるようなので、日本、中国、韓国でほぼ決まり。あとは内容が大切です。その後は12月に軽井沢の大会があり、年が明けて2018年は1月の日本選手権に出場しないので、オリンピックまで試合を見る機会はないかもしれません。